Service List単色X線光電子分光分析装置(SSX-100)
原理及び特徴

物質にX線を照射すると、その表面から光やX線や電子が放出されます。 X線光電子分光法はX線照射により放出される電子(光電子)を検出して、 主に固体表面にある元素の種類、原子の結合状態を測定する、いわゆる表面分析です。 簡単な原理図を図4-1に示します。

物質表面にエネルギ-hνの光子(X線)を照射し、放出した光電子の運動エネルギーをEkとすると、その軌道電子の結合エネルギー(束縛エネルギ-)Ebとの間には、
Eb=hν-Ek-ΦSP (ΦSP:スペクトロメーターの仕事関数)
の関係が成り立ちます。そこで、hνが一定の特性X線を照射すれば、放出電子のEkを測定することにより電子のEbが間接的に求められます。 理論的には全元素が分析可能ですが、感度などの点で現実には水素元素のスペクトルは検出されません。
最小検出感度は他の分析機器に比べて良くありません。しかしXPSの特徴は表面の数原子層が分析可能なことと、結合状態の変化によるスペクトルのシフト(ケミカルシフト)から原子間の結合状態を知ることができることです。 図4-2はケミカルシフトの例であり、炭素Cと他の原子の結合状態が変化することによって、C1sのピーク位置にシフトが認められます。ところが、絶縁物の場合は、帯電によるスペクトルのシフトが起こり、さらに元素によってはX線によるオ-ジェピ-クが混在するので、 スペクトルの解析には、かなりの基礎データと経験による総合的な判断が必要です。
照射X線には、単色化してないノンモノクロ光源(Mg Kα1,2,Al Kα1,2)、あるいは単色化したモノクロ光源(Al Kα1)を使います。 一般にモノクロ光源を使用した装置は白色X線によるノイズや他の特性X線による重なりが少ないため、スペクトル分解能や検出限界も良くなります。 また、モノクロ光源はX線を細く絞ることができ、微小領域(150μm)の分析も可能となります。

SURFACE SCIENCE INSTRUMENTS社製 SSX-100の仕様
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X線源
陽極 Al Kα線(1,487eV) 最大出力 0.20kVA(10KV-20mA) 単色化 あり -
アナライザ
エネルギ-範囲 0~1,100eV 分解能 Au4f7/2で0.69eV半値幅
Ag3d5/2で0.58eV半値幅 -
試料・試料処理
試料状態 固体、粉体 試料寸法 直径最大89mm,厚さ25mm以下 同時装着個数 任意 イオンスパッタ Arイオンガン -
測定機能
測定範囲域 150,300,200×750,400×1000μm 多試料自動分析 可能 自動深さ分析 可能 自動定性分析 可能 定量分析 可能 -
デ-タ処理: コンピュータシステムによる高速処理
多試料自動分析
波形分離、カーブフィッティング
積算
使用例


図4-3 金の分析


図4-4 Si基板の深さ分析
Siウエハ-上に形成された100nmのSi酸化皮膜をArイオンガンによりエッチングしながら深さ方向の分析を行なった結果です