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Service List微小部電子線分析装置(EPMA)

原理及び特徴

電子プロ-ブマイクロアナライザ(EPMA)は細く絞った電子線を試料表面に照射し、発生した特性X線を検出して元素分析する装置です。 したがって、走査電子顕微鏡(SEM)にX線検出部と制御および解析用コンピュ-タが加わっただけであり、電子ビ-ムの照射系はSEMと変わりません(第4.2.1図参照)。 X線検出部には分光結晶を利用した波長分散型(WDS)と半導体検出器を使ったエネルギ-分散型(EDS)とがあります。 それらの構成を図3-1に示します。

(a)WDS (b)EDS

図3-1 WDSおよびEDSのシステムブロックダイヤグラム

WDSを装着した装置は検出感度や定量性に優れているが、試料表面の凹凸に影響されやすく分析時間が長いという欠点があります。 一方、EDSを装着した装置は試料表面の凹凸にあまり影響されず、短時間で分析できますが、 検出感度、定量性、エネルギ-分解能がWDSに比べて劣ります。

EPMAは電子線の加速電圧を10~30kVで用い、2次電子像または反射電子像を見ながら目的の部分に電子線を照射し、 試料中のどの部分に、どのような元素が含まれるかを調べる定性分析と、その場所の元素の含有量を調べる定量分析が行えます。 分析における二次元的分解能は、物質内部でX線が散乱するため分解能は約1μm程度で、分析可能な元素はWDSで4Be~92U、 EDSで11Na~92Uです。

具体的な分析方法を以下に示します。

(1)面分析 元素の二次元的分布や濃度分布を調べる方法で、分布状態を写真及び画像として保存出来ます。
(2)線分析 電子ビ-ムを一直線に走査し、試料の一方向における元素の濃度勾配を知る方法で写真やチャ-ト紙で保存できます。
(3)点分析 試料の1点(約1μmφ)か、ある領域の定性分析や定量分析をする方法で、チャート数値として保存できます。
(4)相分析 面分析のデータから分析対象元素の相関を得たり。散布図中のクラスタを色分けしてフェーズマップそ作成することができます。
(5)状態分析 化合物の結合状態を反映した波形を有するX線スペクトルを測定する方法で化学結合の違いを見ることが出来ます。

これらの他、EPMAによる元素分析ではないですが反射電子による元素の分布(組成像)を調べることが出来ます。次に、その原理を説明します。 反射電子は、入射電子の強度に対する反射電子強度の比(後方散乱係数)原子番号に依存します。すなわち、原子番号が大きい試料(あるいは領域)からは反射電子の量が多く、原子番号の小さい試料(あるいは領域)からは反射電子が少なくなります。よって、原子番号の大きな領域は明るく、原子番号の小さな領域は暗く観察されます。この原理を応用すれば、元素の分布である組成像を観察することが出来ます。しかし、実際には表面の凹凸による影響があり、 単純には組成の情報だけを引き出すことは出来ませんが、2つの検出器を使って実現できます。

反射電子検出器を、図3-2に示すように入射電子線に左右対称に2個備え付けます。AとBそれぞれの検出器に入る反射電子の信号は、組成の異なる試料に対しては図の(a)になります。一方、凹凸による信号は図の(b)のようになります。左右ABの検出器の電気信号を、電気的に加算あるいは減算して組成あるいは凹凸のどちらか一方の情報だけを選別出来ます。 組成だけの情報で観察した像を組成像(COMPO像)、凹凸の情報だけで観察した像を凹凸像(TOPO像)と呼びます。

図3-2 反射電子の情報分離
(a)原子番号の情報、(b)凹凸の情報

仕様

WDSとEDSの仕様を表3-1に示します。

表3-1 WDSとEDSの比較(日本電子:JXA-8200)

使用例

(a) WDS
(b)EDS
図3-3 WDSにおける定性分析とEDSにおける定性分析

鉄系母材の上に銅メッキしてある試料の穴があいている不良部を定性分析を行いました。

(b)EDS
図3-3 WDSにおける定性分析とEDSにおける定性分析

鉄系母材の上に銅メッキしてある試料の穴があいている不良部を定性分析を行いました。

図3-5 針断面の面分析と相分析

縫い針を断面にして面分析を行いその結果を鉄とニッケルの2元素で相分析を行った結果です。